ロ朝が切ったカードに対し、中国は何らかの形で不快感を示すだろう[2024年6月19日、北朝鮮・平壌](C)EPA=時事/GAVRIIL GRIGOROV / SPUTNIK / KREMLIN POOL

 本年6月中旬のウラジーミル・プーチン大統領の北朝鮮およびベトナム訪問の動きは、中国とロシアの関係の複雑さと厳しさを外部から推測できる貴重な機会であった。世界は「民主主義対権威主義」「西側対中ロ」といった簡単な構図で進んでいるわけではないことが分かる。

 プーチンの最大の関心事項はロシア・ウクライナ戦争であり、ロシアが勝利したと国内的に説明出来る結論しか受け入れる気はない。負けたとなればプーチン政権も持たない。プーチンの外交的動きの最大の動機付けが、戦争に勝つ仕掛けの構築にあると見て間違いはない。それが本年6月中旬の北朝鮮およびベトナム訪問の動きとなるし、インドのナレンドラ・モディ首相の訪ロも、ロシア側の最大の動機付けはそこになる。

 だが、この外交劇の隠れた主役が中国であることも、また衆目の一致するところである。

 塩野七生氏は『ローマ人の物語』の中でジュリアス・シーザーの打つ手は、常に複数の目的を持っていたと叙述しているが、外交も同じだ。1つの動きは複数の狙いを持っているし、持たせるべきである。ロシアをめぐる各国の一連の動きは、ある意味で特定の条件下における通常の伝統的な外交に過ぎない。複雑に見えるが、当たり前のことを行っているだけだ。舞台に登場する、ロシア、北朝鮮、ベトナム、インドも、それを見守る中国も、そういう「外交」に習熟している。

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