敗北はほとんど避けられないものだった[官邸前で退任演説を行うスナク前首相=2024年7月5日、イギリス・ロンドン]

 英国で7月に実施された総選挙の結果、14年ぶりの政権交代が実現した。穏健左派の新首相キア・スターマー(61)が率いる労働党は、全650選挙区のうち411選挙区で勝利を収め1、安定多数を背景に、比較的堅実な政権運営に携わると予想される。外交や安全保障は、保守党政権のラインから大きくは外れないと見られている。

 ここでは、下野した保守党に焦点を当ててみたい。英国の欧州連合(EU)離脱騒ぎのさなかに実施された前回2019年の総選挙で365議席と大勝した保守党は、約4年半の間にその資産を使い果たし、今回121議席に沈んだ。その過程と背景を振り返る営みは、今後の英国政治のみならず、欧州政治やポピュリズムの将来を考えるうえでも重要だろう。

 筆者は今回、投開票日の7月4日前後に英国に滞在し、英保守党政治研究の第一人者として知られるロンドン大学クイーン・メアリー教授ティム・ベイル(58)の助けを借りつつ、選挙を観察した。

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