キプロス問題はトルコにとって、与野党の対立を超えて国家の正義と面子がかかった問題とされている[トルコ国旗(左)と「北キプロス・トルコ共和国」の旗が掲げられた建物。ギリシャ系住民の追放前は学校として使われていたという=2024年6月5日、キプロス・バローシャ](C)時事

 トルコはなぜEU(欧州連合)に加盟できないのか。この問いは、EUがなぜトルコを(入れたくても)入れられないのかと表裏一体だ。先に述べるが、その理由は宗教の相違ではない。

 EU加盟要件である「コペンハーゲン基準」については、トルコの現政権下でも今後の方針転換によって、あるいは政権交代の場合には、EU側の理解も深まれば達成が期待できる。一方で、政権が交代しても変更を期待できそうにない外交政策こそが、加盟への究極の障害となっている。それがキプロス問題だ。

「我々は歴史的な真実を訴えかけるためここに来ている」。今年7月20日、島の北部ではちょうど50年目を迎えた1974年のトルコ軍キプロス派兵の記念式典が開催され、来席したレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は力を込めてこう述べた。政権に猛攻をかける最大野党・共和人民党のオズギュル・オゼル党首も、式典では肩を並べた。世俗主義とイスラム教、クルド問題など、何かと分断の多いトルコにあってキプロス問題は、50年来国民の紐帯となってきた超党派の団結事項だ。

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