アルメニア「サバイバル戦略の行方」(2) 圧迫される国土
2024年10月26日

自宅のベランダから東方を指さすアンティカ・ゴニヤン。左前方の白い建物がアルメニア国境警備隊の詰め所。その先はアゼルバイジャン領(筆者撮影、以下すべて)
その村、ダヴィット・ベックの名を初めて耳にしたのは、アルメニア南部シュニク州の州都カパンを訪れた時だった。ここでNGOを主宰する女性アニー・サルグシアン(33)からである。
アゼルバイジャンは2023年9月、ソ連時代の自治州だったナゴルノ・カラバフを事実上武力で制圧した。そこに暮らしていたアルメニア系住民12万人は、ほぼ全員がアルメニア本土に避難民となって脱出した。このうちの数百人前後がカパン周辺に移り住んでおり、サルグシアンたちはその支援に取り組んでいる。
避難民たちは経済的に苦しい立場にあるだけでなく、故郷を失うという精神的心理的ダメージも受けている。そのケアが大切だ――。そのような話の中で、サルグシアンが漏らした。
「ナゴルノ・カラバフではありませんが、私自身も昨年まで、アゼルバイジャンとの国境近くの村に住んでいました。でも、6歳の息子がいるので、安全なカパンの街に引っ越してきたのです」
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