岐路に立つ帝国アメリカ(下)――「アメリカ」への楽観と諦念を
2024年12月13日

アメリカは同盟国を「利益のために利用」する方策を模索しているのであり、「放棄」しようとしているわけではない[APEC首脳会議で会談するバイデン米大統領(左手前)と中国の習近平国家主席(右手前)=2024年11月16日、ペルー・リマ](C)AFP=時事
転機としてのバイデン政権
2017年1月、冷戦期以来の国家戦略が動揺するなかで誕生したのが第一次ドナルド・トランプ政権だった。この政権は、こうした戦略論争とは無縁に、しかしそれゆえにより直截に、長きにわたるアメリカの戦略構想から大きく逸脱した外交を展開することとなる。そしてその特異な行動様式は、2010年代前半期以来のアメリカ外交の変化を急速に促進する役割を担うこととなった。
とりわけ決定的な意味を持ったのが、トランプ政権の対中政策である。すでにバラク・オバマ政権末期の2014年から2015年を転機として、アメリカの対中政策は大きく変化しはじめていた。とはいえオバマ政権の対中政策は、同盟諸国との軍事関係の強化、自由貿易の推進、国際制度の拡充によって中国の行動を牽制するという、伝統的な国家戦略の延長線上に展開されたというべきだろう。環太平洋パートナーシップ(TPP)の推進はその象徴といえる施策であった。
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