日本が形成に大きな役割を果たしたアジアの地域枠組みは数多い[2025年5月15日、APEC貿易担当大臣会合=韓国・済州島](C)EPA=時事

 

秩序と不可分だった同盟

 主導国アメリカが国際秩序を提供し、追随国たる日本がこれに参画する。この交換関係に基づく非対称同盟としての日米同盟は、いま大きく変質しつつある。遡ればその兆候は2010年代に確認することができるが、その詳細は別稿に譲り4、この本論後編では2025年半ばにおける現在、すなわち第二次トランプ政権初頭の展開に焦点を当てて、日米同盟の現在地と将来について考えてみたい。

 前述のように、アメリカ主導の非対称同盟が安定的に運営されてきたのは、同盟がアメリカ主導の国際秩序を支える要の制度として機能してきたからにほかならない。急いで付け加えるならば、アメリカと同盟国の間に摩擦が絶えなかったことは確かである。同盟国にアメリカの防衛コミットメントの不安定化への懸念が燻ることも、逆にアメリカのプレゼンスへの反感が高まることも珍しくなかった。アメリカ政府がときに特定の同盟国を見捨てると公言し、またタイ、イラン、フィリピン、ニュージーランドのように実際に撤退した、もしくは撤退せざるを得なくなったこともあった。

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