保険会社がつかんでいた東京爆撃の戦略情報

執筆者:春名幹男2001年8月号

 日本の金融部門への外国資本の進出が顕著だ。不良債権を買い漁る“ハゲタカ・ファンド”を見て、「第二の敗戦」の思いを強くする人も少なくない。 それにとどまらない。買収を通じて、日本の金融機関に関する情報は外国、特に米国のM&Aコンサルタントにも丸裸にされる。 だが、戦略的にも戦術的にも情報という立場から考えると、保険の分野ほど重要な情報が集まるところはない。生命保険、損害保険会社は情報の宝庫だ。 保険を掛けると、保険会社には、保険対象に関する重要情報が提供される。保険契約に当たって、生保には、個人の健康に関するプライバシー、損保には、建物の概要から強度、価値、場合によっては設計図や写真まで、第三者がなかなか入手し得ない情報が報告されるはずだ。 第二次世界大戦中の爆撃作戦の舞台裏で、こうした保険情報をめぐる熾烈な情報戦争が繰り広げられていたことが、米ジャーナリスト、マーク・フリッツ氏の調査で明るみに出た。 米中央情報局(CIA)の前身、米戦略情報局(OSS)に、超極秘の部門「保険情報部」が設置され、ナチス・ドイツなどと争って、爆撃に必要な情報を収集していたというのである。 実は、ドイツ側もかなりの保険情報を集積していた。第二次大戦前、保険会社がリスク分散のために掛ける、世界の再保険の市場は、ドイツが四五%ものシェア(市場占有率)を持っていたと言われる。

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