アメリカの“困惑”をよそに、住民投票実施へと走る台湾。しかし、その原因をたどれば、そこにはアメリカの二枚舌外交があった。 アメリカ外交の二重基準に抵抗するのは通常、困難である。アメリカの軍事戦略やビジネス利権を尊重してきたスハルト独裁政権が突如民主主義の名の下に否定されて崩壊したインドネシアの例や、民主的手続きを踏んだシェワルナゼ大統領が石油パイプライン利益を重視したアメリカの圧力で退陣させられた最近のグルジアのような例は、世界のいたるところにある。ところが、この二重基準を逆手にとってアメリカを大いに悩ませている島がある。台湾である。「奴は何というか、“gratuitous”(無用のことをする)で困り者だ」――。二月三日夜、東京・赤坂のアメリカ大使館では、北京からの帰途日本に立ち寄ったアーミテージ国務副長官を迎えて、ベーカー駐日大使が公邸でレセプションを開いた。広間の片隅の立ち話で、米側要人の口から出たのは愚痴である。愚痴の矛先は台湾の陳水扁総統である。 陳総統が計画している三月二十日の総統選挙に合わせた住民投票は北京の強い反対を受け、ブッシュ政権は昨年十二月の中国・温家宝首相訪米の際には、ブッシュ大統領が住民投票批判を表明した。

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