第百五十九回通常国会が一月十九日に召集されてから一カ月。国会では連日、イラクへの自衛隊派遣の是非をめぐり激論が戦わされた。 自衛隊の海外派遣に国会がこれほど関心を払ったのは、戦後初めて自衛隊の本隊が海を渡った一九九二年のカンボジアPKO派遣以来と言っていい。今度こそ隊員に初の犠牲者が出るかもしれない、隊員による発砲で現地人に死傷者が出るかもしれないとの懸念が議場に重苦しい緊張感を与えていた。 九・一一テロを受けてのインド洋への海上自衛隊派遣に際しては、法案に反対しながら派遣は承認し、自衛隊を送り出す側に回った野党第一党・民主党も今回は派遣反対の論陣を張った。報道各社の世論調査でも賛否が拮抗し、まさに国論を二分する中での与野党攻防。最大の論点は憲法九条に抵触しないか、また「日米同盟」と「国際協調」の両立という戦後日本外交の基本原則を踏み外すことにならないかという問題だった。首相が口にしたあけすけな本音「民主党だって政権を取れば日米同盟重視でいかざるを得ない。国際政治の現実を知らないから呑気なことを言っている」と、小泉純一郎首相が漏らしたのは一月十三日夜、細田博之官房副長官らとの会食の席だった。日米同盟と国際協調の二者択一を迫られれば、日米を取らざるを得ない。それが国益にかなう選択だ。そんなあけすけな本音を首相が思わず口にした場面が、この間の論戦でも一度だけあった。一月二十七日の衆院予算委員会。質問者は民主党の左派の論客、生方幸夫氏(千葉六区)だった。

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