取り付け騒ぎも起こった韓国「貯蓄銀行20行破綻」の顛末

平井久志
執筆者:平井久志 2012年5月24日
エリア: 朝鮮半島

 フォーサイト読者の方から御質問を受けました。
「韓国で昨年から今年にかけて20行もの銀行が破綻し、今年はかなり大きい銀行4行が破綻して取り付け騒ぎまで起こっているのに、日本では経済紙を含めたメディアもフォーサイトも何も報じないのはなぜか」という御質問です。
「うん、そうか」と考えました。筆者も含めて、日本のメディアは、これをあまり大した問題と思っていませんでした。むしろ、今年の銀行破綻は、筆者がフォーサイトでも書いた韓国政界の不正腐敗と関係しているものもあり、これをもっと詳しく書いた方が良かったかなとも思いました。

「表の経済」と「裏の経済」

 韓国で長く暮らしていると、韓国の「表の経済」と実際の庶民を動かしている「裏の経済」の2重構造を実感します。
 韓国では「私債(サチェ)」と呼ばれる私金融が長く大きな力を持ち、これが「地下経済」の機能を果たしてきました。高金利で資金を集め、高金利で貸し付ける「私債」の世界にはリスクがつきもので、様々な事件が発生しました。金融業界は政府が牛耳る政府系金融機関が圧倒的な力を発揮しましたが、中小企業はそこでは資金調達ができず「私債」の世界に頼るという傾向がありました。
 韓国の財閥が急成長できたのは政府系金融機関からの恩恵を受けたからであり、韓国で中小企業が育たない理由の1つは、金融機関で十分な資金調達ができないからです。これほど世界的な企業にまで成長した韓国の財閥が金融機関を系列に持っていないのは、そうでなくても政府の支援を受けてきた財閥が金融機関まで握ると経済をさらに私物化する恐れがあるからです。
 韓国経済が発展するにつれ、少しずつ「私債」の持つ世界が小さくなっているのも事実です。金融機関が経済の血管の役割を果たすと、当然、地下経済は縮小に向かいます。
 しかし、それでも大手金融機関は庶民の側には立ちません。
 そんな中、預金金利も一般都市銀行より高く、貸し付け金利も一般都市銀行より高い金融機関があります。その1つが「貯蓄銀行」と呼ばれる銀行です。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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