“熱帯への進軍”最前線を歩く(4) 「南僑機工」の歴史を辿って

樋泉克夫
 上手赤枠内の拡大が下図
上手赤枠内の拡大が下図

 小雨が降り始めた国境の街・畹町の表通りを小走りで駆け抜け、路地の先に店を構える国営新華書店の畹町支店に飛び込み10冊ほど本を買う。ちょうど昼時で食事中だったが、珍しいことに店員は食事を中断して嫌な顔もせずに応対してくれた。よほど客が少ないと見えて、どの本も砂埃でザラついている。

 いま1番売れている本を尋ねると、離婚関連の法律を実例を示しながら解説した『中華人民共和国婚姻法(実用版)』(中国法制出版社 2011年)、それに交通事故関連法規を農村で頻発する事故に則して判り易く解説した『送法下郷之道路交通事故』(周紅格・劉顕剛 中国法政大学出版社 2010年)の2冊。他にも料理本やらファッション関連本が平積みされ、土埃なんぞついてはいなかった。どうやら、こんな辺鄙な国境の街ですら、離婚や交通事故が日常化し、グルメにファッションがブームのようだ。消費社会の広がり、その裾野の広さを改めて思い知らされた。

 ふと前方を見ると広場があり、正面の壁には4、5メートル×30メートルほどの巨大な写真が貼られている。毛沢東を中心に右に朱徳、劉少奇、周恩来、陳雲、陳毅、毛の左には独立ビルマ(現ミャンマー、以下同)初代指導者のウ・ヌー首相夫妻と思しき人物、その左に3人の男性が立つ。中国側は全員が人民服で、ビルマ側は全員がビルマの民族衣装だ。写真の上には「中緬建交六十周年 充分発揮畹町橋梁紐帯作用(中国・ビルマ国交樹立60周年 両国を結ぶ畹町の橋梁紐帯作用を充分に発揮させよう)」との文字が見える。彼らが1949年の建国直後に両国の国交を結んだ功労者ということだろうが、あるいは偽造写真の可能性もなきにしもあらず。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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