「送電技術」をテコに市場参入を図る東電

執筆者:五味康平 2005年7月号
エリア: 中国・台湾

 今年の夏場も深刻な電力不足が懸念される中国の電力市場に向け、日本の電力業界が新たな参入の動きを始めた。東京電力が電力中央研究所(東京・千代田)と組んで、中国最大の送電網運営会社、中国国家電網公司(北京市)と高圧送電線を中核とする送電分野の技術コンサルティング契約を結んだ。日本では長距離の高圧送電は送電ロスの少ない五十万ボルトにほぼ移行し、百万ボルト送電が可能な送電線もすでに東京電力が建設している。電力業界の技術開発の中心である電中研は高電圧分野の研究では世界トップクラスの蓄積を持っている。 中国では一部に五十万ボルト送電も導入されているが、大半は二十七万五千ボルトや十万ボルト級の送電。従来は沿海部の需要地近接型の石炭火力発電所が電力供給の中心だったため、これでよかったが、電力需要の増加とともに発電所の立地が遠隔地の内陸に移行する傾向が強まっている。長江(揚子江)中流に建設した千八百万キロワットの発電能力を持つ世界最大の水力発電所、三峡ダムなどはまさにその典型だ。需要地から離れた内陸の発電所からロスを最小限に抑えて送電する技術の必要性が急激に高まっていると言っていい。 一言で高圧送電といっても鉄塔の設計、送電線を固定するガイシの生産、避雷技術から系統運用まで幅広い技術の集積。長距離送電網の建設を急ぎたい中国としては、自前の技術開発では電力需要の急増に間に合わないと判断。国内に反日ムードが根強い中で、あえて東電、電中研からの技術導入を決めた。中国は三峡ダムに次ぐ発電能力増強策として内陸の甘粛省、寧夏回族自治区に延べ二千万キロワットの発電能力を持つ天然ガス火力発電所群を建設し、沿海部に送電する「西電東送」プロジェクトを進めている。計画実現には二千キロを超える長距離送電線が不可欠で、中国政府はここに高効率の百万ボルト送電線を導入する意向。砂漠、強風、激しい温度差、落雷などのある地域を通る送電線だけに、実績のある外資に任せたい考えだ。

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