米国の包囲網に「敗北」寸前の「スイス金融界」

磯山友幸
執筆者:磯山友幸 2013年12月12日
エリア: ヨーロッパ 北米
 スイス金融界はいまも揺れている……    (UBSスイス銀行本店)(C)AFP=時事
スイス金融界はいまも揺れている……    (UBSスイス銀行本店)(C)AFP=時事

 今年10月19日、イタリアのボローニャで妻と休暇を楽しんでいたひとりのスイス人銀行家が突然、イタリア警察に逮捕された。ラウル・ワイル氏(54)。スイスの銀行最大手であるUBSで、スイス国外の富裕層を主な顧客とする国際プライベート・バンキング部門のトップを務めた人物だ。今年春にはスイスの中堅プライベートバンクのCEO(最高経営責任者)に就任したばかりだった。

 ワイル氏は米国から「逃亡犯」と認定されており、それは本人も認識していたとみられる。だが、米国が国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配しており、まさか隣国で逮捕されるとは思ってもいなかったに違いない。ホテルに実名でチェックインしたため、警察当局に情報が行き、逮捕につながったとみられる。ワイル氏はその後、保釈も認められず、1カ月以上にわたってイタリアの拘置所に収監されたうえ、米国に移送、裁判を受けることとなった。

 ワイル氏は、殺人や強盗といった凶悪な罪を犯したわけではない。スイスと米国の間で続いてきた“戦争”の生け贄になった と言ったらよいだろうか。

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執筆者プロフィール
磯山友幸
磯山友幸 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト。著書に『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)などがある。
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