政府系企業「私物化」を進める霞が関の「二枚舌」

磯山友幸
執筆者:磯山友幸 2014年7月24日
エリア: 日本

 報道によると、国土交通省が九州旅客鉄道(JR九州)の株式を2016年度までに上場する検討を始めた。JR九州は、国が独立行政法人の「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」を通じて全株式を保有している。事業の多角化などで収益力が向上してきたことから、JR九州自身が株式上場によって経営の独立性を高めることを要望しており、国がこれに応える格好だ。国交省は有識者会議を今秋に立ち上げ、上場時期や具体的な方法についての検討を始める、という。

 JR九州はここ数年、デザイナーがデザインした個性的な車両を次々と投入して人気を博しているほか、超豪華クルーズトレイン「ななつ星in九州」の成功など、鉄道事業で成果を挙げている。また、駅ビル事業や不動産業、ドラッグストアや居酒屋チェーンなどの多角化も進めており、収益力は急速に高まっている。

 2014年3月期の売上高は、単独決算では1961億円だが、連結ベースでは3548億円に達し、多角化の進展を物語っている。連結純利益は115億円にのぼる。経営陣が上場を求めるのは半ば当然の業績にみえる。

 

「JR九州上場」真の狙い

 これまで国交省は、上場には否定的な姿勢をとり続けてきた。それがここへ来て前向きに転じた背景には、ある事情があった。約5000億円とみられる株式売却益を整備新幹線の開業を前倒しするための財源に充てようという案が、自民党内や国交省内に浮上しているのだ。自民党などは、青森から札幌への新幹線延伸の開業時期を現行の2035年度から5年前倒すことや、北陸新幹線の敦賀(福井県)延伸を2025年度から3年前倒すことなどを求めている。その実現のための財源として上場益を使おうというのである。

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執筆者プロフィール
磯山友幸
磯山友幸 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト。著書に『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)などがある。
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