饗宴外交の舞台裏
饗宴外交の舞台裏(200)

「官邸のおもてなし」で安倍首相が発信する「日本の食」

西川恵

 安倍晋三首相は歴代首相の中で、最も熱心に日本の食文化と日本農産品のトップセールスに取り組んでいる首相と言っていいだろう。同首相になって官邸の饗宴が幾つかの点で変わったのもこのことと関係している。ある意味、官邸は外国首脳に向けた日本の食文化と農産品の発信拠点となっている。

 来日した外国首脳のだれの時は饗宴を持ち、だれの時には持たないと外交慣例で決まっているわけではない。ただこれまで非公式訪問の時は省かれることが多かった。

 しかし安倍首相は、「来日した外国首脳にはなるべく食事を差し上げよう」と官邸の事務方に指示している。それでなくても同首相のダイナミックな外交を反映して来日する外国首脳は多いから、饗宴は頻繁に持たれる。

 

和食と日本ワインで

 饗宴は具体的にどう変わったか。第1に、それまで洋食、和食、和洋折衷の3種類のチョイスを提示して外国首脳の希望を聞いていたのを、和食1本に統一したことである(和食が苦手な首脳は洋食にする)。

 第2に、以前はフランスを中心に外国ワインを出していたのが、安倍首相になってからは白、赤とも日本ワインとなった。もちろん首相の指示である。

 第3に、それまで官邸と外務省が仕切っていた饗宴に、首相の指示で農水省もかかわるようになり、農水省の外食産業室に専門官が配置された。

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執筆者プロフィール
西川恵
西川恵 毎日新聞客員編集委員。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、論説委員を経て、今年3月まで専門編集委員。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、本誌連載から生れた『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。本誌連載に加筆した最新刊『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)が発売中。
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