金正日総書記の長男で、「ディズニーランド見物」を果たせず強制出国となった金正男氏は、すでに数年前から後継者としての地位を与えられていたようだ。北朝鮮では一九九六年、国家保衛部(秘密警察)と社会安全部(一般警察)で事件が起き、粛清があった。そして新たに両部を統括する保衛司令部が設けられ、事実上の責任者として正男氏が送り込まれた。「北朝鮮は秘密警察でもっている国であり、後継レースはここで決着がついていた」(情報筋)。九五年以降、正男氏は繰り返し日本に不法入国しており、各国情報機関の間では以前から「有名人」だった。同じ偽造旅券を何度も使用し、生年月日は正確に記入するなど、情報機関に敢えて挑戦的な態度を取っていたふしすらある。

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