「習近平」との会談で垣間見えた「スーチー」の政治的思惑

樋泉克夫

 6月11日、ミャンマー野党のNLD(国民民主連盟)を率いるアウンサン・スーチーは、北京で習近平国家主席との会談に臨んだ。ただし、その際の習主席の立場は国家主席ではなく共産党総書記。それというのも、この会談はNLDと共産党との政党間交流の一環として行われたからである。それにしても、彼女をミャンマー民主化の象徴として捉え、オバマ米大統領自ら2回もヤンゴンの彼女の自宅を訪問したことを考えると、ミャンマーの民主化を中国離れに結び付けて捉えているであろうオバマ政権にとって、彼女と習主席との握手シーンは悪夢と思えたのではなかったか。

 

習近平の苛立ち

 中国国営『新華社通信』が伝えたところでは、この会談で「ミャンマー国内情勢がどのように変化しようと、ミャンマーが中国との友好関係を積極的に推進することを希望する」と語りかけた習氏に対し、スーチーは「友好関係の発展に努めたい」と応じたとのことだ。また中国外交部はスーチー訪中を、「党同士の信頼と理解とを深め、両国関係の発展に繋がる」との見解を明らかにしている。

 今回の訪中の狙いについては、彼女の側に立つなら、今秋予定の総選挙でNLDの優勢が伝えられているだけに、大都市の華人票に加えて国境一帯に住む中国系少数民族の支持取り付けも含め、より強固な地盤固めを狙ったのではないか。一方、中国側からすれば、野党のNLDとの関係を内外に強く印象づけることでアメリカとの接近を進める現テイン・セイン政権を牽制したい、あるいは総選挙でNLDの優勢が伝えられることから、NLDとの関係を深めることで総選挙後のミャンマーとの関係の再構築を目指す――など、様々に観測されている。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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