香港「拘束された書店主の告白」が揺るがす1国2制度の「信用」

執筆者:野嶋剛 2016年6月22日
エリア: アジア

 香港でまた「1国2制度」に対する香港人の「信頼」を揺るがす問題が起きている。香港の書店「銅鑼灣書店」の関係者5人が失踪し、中国国内で長期拘束されていることが明らかになった問題で、釈放されて香港に戻った同店店主の林栄基さん(61)が6月14日、公の場に姿を現して記者会見に応じ、赤裸々に拘束をめぐる実態を語った。

 拘束された5人のうち、出版社オーナーの桂敏海さんを除く3人は林さんより先に香港に戻っているが、彼らは口を閉ざして実情を明らかにすることを拒んできたので、当事者の証言は初めてとなる。拘束中に中国のテレビで流された「告白」のビデオの内容は、「脚本があり、監督もいた」として、事実ではなく、強制された演技だったとも語った。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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