「エネルギー」「資源」「食糧」の最大の供給路「南シナ海」で高まるリスク

後藤康浩
中国によってビルや塔が建設された南シナ海南沙諸島のクアテロン礁=5月上旬撮影(C)時事(フィリピン国軍関係者提供)

 

 南シナ海が「世界で最も危険な海」になりつつある。常設仲裁裁判所に南シナ海の管轄権を全面否定された中国が面子をかけて人工島造成など南シナ海占拠を加速しており、米国やフィリピン、ベトナムなどと偶発的な軍事衝突が起きる可能性は着実に高まりつつあるからだ。世界の海上物流の3分の1、金額ベースで年間5兆ドルの商品、資源などが通過する南シナ海が、一時的にせよ通航不能になるリスクを日本含めアジアは想定すべき時が来ている。問題は迂回路、代替供給先の確保の難しさに加え、想定しきれない石油、穀物など商品市況暴騰という世界経済への打撃だろう。

 

「母なる海」

 南シナ海をめぐっては、これまで海洋資源や漁業権の確保を目指して、各国が領土領海、排他的経済水域を主張、衝突してきた。だが、そうした現状ではまだ大きな経済的具体性を持たない対立ポイントに比べ、南シナ海の船舶の航行、すなわち海上物流は、最も懸念すべき現実問題になっている。この海域は日本、中国、韓国、台湾、フィリピン、ベトナムなどに向かう石油、液化天然ガス(LNG)、石炭、鉄鉱石、穀物など資源、食糧の輸入ルートであるとともに、鉄鋼、自動車、家電、電子電機、繊維、雑貨など、世界に向けた工業製品輸出のメインルートになっているからだ。それだけに、南シナ海が航行不能になった場合の衝撃は、かつてささやかれたホルムズ海峡封鎖のインパクトを遥かに上回るだろう。

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執筆者プロフィール
後藤康浩
後藤康浩 亜細亜大学都市創造学部教授、元日本経済新聞論説委員・編集委員。 1958年福岡県生まれ。早稲田大政経学部卒、豪ボンド大MBA修了。1984年日経新聞入社。社会部、国際部、バーレーン支局、欧州総局(ロンドン)駐在、東京本社産業部、中国総局(北京)駐在などを経て、産業部編集委員、論説委員、アジア部長、編集委員などを歴任。2016年4月から現職。産業政策、モノづくり、アジア経済、資源エネルギー問題などを専門とし、大学で教鞭を執る傍ら、テレビ東京系列『未来世紀ジパング』ナビゲーター、ラジオ日経『マーケットトレンド』などテレビ、ラジオに出演。講演や執筆活動も行っている。著書に『ネクスト・アジア』『アジア力』『資源・食糧・エネルギーが変える世界』『強い工場』『勝つ工場』などがある。
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