中国はトランプにどう立ち向かうのか

宮本雄二
執筆者:宮本雄二 2017年2月2日
エリア: 北米 中国・台湾
1月17日、ダボス会議でトランプ米大統領の保護主義に反対する姿勢を明確にした習近平氏 (C)EPA=時事

 若いころ、米国の外交官に「この問題を解決しようとしても障害が多すぎる」と指摘すると、「障害は取り除けば良い」と軽く一蹴されたことがある。日本は、与えられた条件の下で対応策を考える。これに対し、米国は必要ならば前提条件そのものを変えて目的を達成しようとする。これが日本と米国の違いであり、「大国の発想」はそういうものなのだ。歴代の米国の指導者も同じ発想だった。結果は成功したり、失敗したりだが、世界に対し大きな影響を及ぼしてきた。

トランプを読み切れない中国

 トランプ大統領は、かなり激しく「前提条件」の変更を試みようとしているように見える。それが米国の社会をさらに分裂させるのか、世界の秩序を壊してしまうのか、まだ分からない。だが、相対的な国力が低下しているとは言え、トランプの発言に一喜一憂する世界を見ると、やはり米国は「超大国」だなと痛感する。
 トランプを読み切れていないという点では中国も同じだ。
 中国外交は、事前に十分準備したものはなかなか上手く対処してきた。シンクタンクをはじめ、多くの人材を活用できるシステムを持っているからだ。だが、フィリピンが南シナ海問題に関し常設仲裁裁判所に提訴したケースに対する対応は、例外的に下手だった。中国外交が自己主張を強めてきたことのツケでもあるが、同時に現在の国際法秩序に対する理解不足のせいでもあった。
 これに対し危機管理や臨機応変の対応はもともと不得手だ。トランプ大統領の登場を、恐らく予測できていなかったと思うし、トランプ対策も不十分だったはずだ。それに加え、トランプの手の内がまだ読めない。そうなると、現時点において中国がやれることは、トランプの動向を慎重に見極めることしかない。だが、中国が具体的な手を打ってくるときは、トランプを見定め方針を確定したときであり、その後は方針がすぐに変わることはない。決めるのに時間がかかるが、変えるのにも時間がかかるのだ。

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執筆者プロフィール
宮本雄二 みやもと・ゆうじ 宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使。1946年福岡県生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。78年国際連合日本政府代表部一等書記官、81年在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、83年欧亜局ソヴィエト連邦課首席事務官、85年国際連合局軍縮課長、87年大臣官房外務大臣秘書官。89 年情報調査局企画課長、90年アジア局中国課長、91年英国国際戦略問題研究所(IISS)研究員、92年外務省研修所副所長、94年在アトランタ日本国総領事館総領事。97年在中華人民共和国日本国大使館特命全権公使、2001年軍備管理・科学審議官(大使)、02年在ミャンマー連邦日本国大使館特命全権大使、04年特命全権大使(沖縄担当)、2006年在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使。2010年退官。現在、宮本アジア研究所代表、日中友好会館副会長、日本日中関係学会会長。著書に『これから、中国とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『激変ミャンマーを読み解く』(東京書籍)、『習近平の中国』(新潮新書)。
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