「増税」「年金」「保険」で景気循環にブレーキを踏むアベノミクスの「矛盾」

執筆者:磯山友幸 2017年12月12日
エリア: アジア
税負担の多いサラリーマン。今回の増税にも割り切れない思いだろう (C)時事

 

 安倍晋三首相は「経済の好循環」を掲げて、円安などで潤った企業収益を「賃上げ」の形で家計に回すよう経済界に要請している。来年の春闘では5年連続のベースアップを実現するよう求め、定期昇給と合わせて「3%の賃上げ」を求めている。家計を潤わせて低迷している消費に火を付け、再び企業収益を底上げする「好循環」の起爆剤にしようとしているわけだ。

 ところがここへ来て、にわかに2018年度税制改正での所得税増税が固まった。給与所得850万円以上の人が増税されることになる見通しだ。いったん800万円で固まりかけたが、公明党内の反対意見に自民党が配慮した結果である。ともあれ、本来なら賃上げで手取りが増え、消費に回るかと思いきや、増税となれば、財布のひもを再び締めることになりかねない。これでは、アクセルを踏みながらブレーキをかけるようなものだ。

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執筆者プロフィール
磯山友幸(いそやまともゆき) 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト活動とともに、千葉商科大学教授も務める。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』 (PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間――大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP社)などがある。
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