1月21日に、トルコ議会(大国民議会:一院制、議席数550)は、大統領権限を強化する憲法改正案を可決した。賛成票は339票で、憲法改正の是非を国民投票に付すことを可能にする60%(330票)を超えた。4月初頭あるいは遅くとも第3週国民投票が行われる見込みだ。

 トルコは現行憲法上は議院内閣制であり、大統領職は議会で選出される儀礼的なものとされてきた。しかし2003年に首相に就任(AKP=公正発展党の政権自体はその前年に発足していた)して長期政権を敷いてきたエルドアンは、2014年に直接投票による選挙を導入して大統領に当選し、形式上は与党AKPの党籍を離脱したことにしながら、実質上は最高権力者として振舞ってきた。

 今回議会が可決した憲法改正案は、「エルドアン親政」の実態に制度を合致させ、エルドアンのAKPへの党籍復帰や、行使してきた大統領権限の公式化さらなる強化をもたらす。エルドアンがあたかもオスマン帝国の皇帝のような権限を振るう「スルターン化」が進むと危惧されている。

 連載「中東 危機の震源を読む」「中東の部屋」、そして「中東通信」の欄で、繰り返しトルコの内政外交の変化を取り上げ、中東政治の展開の基軸として観察してきたが、エルドアンによるトルコの政治体制の改変は、中東政治の根幹の部分での大きな変質を意味する。

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