少年Aが酒鬼薔薇聖斗を名乗って神戸新聞社に送り付けた犯行声明文 (C)時事

 神戸連続児童殺傷事件をおこした酒鬼薔薇聖斗こと少年A。

 すでに少年院を出て、私たちと同じ社会に暮らすAは、はたして更生しているのだろうか――。

 じつは、法律には「更生」の定義がない。更生の意味合いは、きわめて曖昧で、抽象的でもある。それだけに、何をもって更生したといえるのか、はっきりしない。

 それでも国が更生のために、絶対に必要だとする条件がある。

 再犯をしないこと、だ。

 かつて刑法に触れる行為をした少年に、再犯をさせないこと。それが、国の更生保護政策の最優先課題として位置づけられている。

 少なくとも、Aは再び人を殺めるような「犯罪」はしていない。

 だが、一般社会で暮らす私たちにとって、更生とはどのようなものだろう。再犯していないこと=更生している、と受け止める人が、どれほどいるだろうか。

 おそらく、そこにはズレが生じる。少年Aの存在が、私たちを揺さぶる理由は、彼の行動が、まさにそのズレを突くからだろう。

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