選挙の顔として野党連合を勝利に導いた「市民プラットフォーム」のドナルド・トゥスク元首相だが、安定した政権運営のためには越えるべき「山場」がいくつもある[10月15日、ワルシャワの投票所にて](C)AFP=時事

 ポーランド国民は、2023年10月15日の国会上下院選挙で、2015年来続いた保守政権に見切りをつけ、中道リベラル派を選択した。事前の世論調査では「法と正義」(PiS)が「同盟 」(Konfederacja)と組んで勝利することが予想されていたが、野党が選挙連合を組み、最後は劇的な勝利をあげた。ヨーロッパで右傾化が進む中で、ポーランドがこの流れに歯止めをかけたことは大きな意義がある。早くも選挙の詳細データが公表されているので、それを元に今回の投票結果を分析し、そこから見えてくるポーランド国民の変化の要因を探るとともに、今後予想される組閣の行方や政権の安定性を考えてみたい。

上下院ともに中道リベラル派で過半数を獲得

 選挙の最大の焦点は、与野党逆転が果たされるかどうかであった。政権与党で保守派の「法と正義」は極右グループ「同盟」と組んで過半数獲得を目指していた。それに対し、野党第1党で中道リベラル派の「市民プラットフォーム」(PO)は選挙連合「市民連合」(KO)で対抗し、中道・キリスト教リベラル系の政治連合「第三の道」や「左派 」と協定を結び政権奪還を目指した。主要政党の動向は『総選挙を目前に苦悩するポーランド(後編)|ポピュリズム拡大の背景にある国民の「不安」』(Foresight、2023年10月3日)を参照されたい。

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