ハンガリーのオルバーン政権はウクライナ国内のハンガリー人マイノリティの一部に旅券を付与し、同政権の票田にしているとされる[ウクライナ西部、ハンガリー国境に近いザカルパッチャ州ベレホヴェ。薬局の看板がウクライナ語とハンガリー語の両方で書かれている=2017年11月14日](C)AFP=時事

 ウクライナは国家の戦略方針として「欧州・欧州大西洋統合」、つまり欧州連合(EU)及び北大西洋条約機構(NATO)への加盟を目指している。このうちEU加盟に向けては、2022年6月にEU加盟候補国の地位を得た際、欧州委員会から国内改革に関わる7項目の勧告を受けた。ウクライナ政府はEU加盟交渉開始を2023年内に開始することを目標としていたが、2023年11月8日、欧州委員会は加盟交渉の前提条件となるこの7項目の履行状況に対する評価報告を発表、ウクライナの加盟交渉の開始を勧告した。

 しかし、7項目のうち憲法裁判所裁判官の選考手続きやメディア分野の改革などの4項目は、欧州委員会によって履行済みと評価されたものの、民族的マイノリティに関する法整備については、汚職対策にかかる改革などと共に、そのさらなる履行に関する勧告が付されることとなった。その歴史的経緯から民族意識の比較的強いウクライナにおける言語と民族を巡る課題について概観したい。

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