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 長野光と関瑶子のビデオクリエイター・ユニットが、現代のキーワードを掘り下げるYouTubeチャンネル「Point Alpha」。今回は、AI(人工知能)の進化によってデータ駆動型社会への移行が急速に進む中での半導体ビジネスの競争について、東京大学大学院教授で研究センターd.lab長、技術研究組合RaaS理事長を務める黒田忠広氏に話を聞いた。 ※主な発言を抜粋・編集してあります。

半導体産業のあり方を大きく変えたTSMC

──TSMCは長らく世界の半導体市場においてトップに君臨してきました。TSMCは今後もトップに居続けることはできるのでしょうか。

 「TSMCの成功の要因は、そのビジネスモデルの秀逸さです。それまでの半導体産業は、1社で半導体の設計~製造~量産~販売を完結する『垂直統合型』のビジネスでした。TSMCは、世界で初めて『半導体製造のみ受託製造する』企業として半導体産業に参入したのです。TSMCの登場により、半導体産業は垂直統合型から水平分業型へと大きく様変わりしました」

 「半導体は、基本的に規模がものを言う産業です。したがって、今後もTSMCがトップに居続ける、と予測することは簡単です。しかし、これまで半世紀にわたって半導体技術の発展を牽引してきた『ムーアの法則』(「集積回路上のトランジスタの数は2年で倍になる」というインテル創業者、ゴードン・ムーアの言葉)が終わりを迎えつつあります。次の半世紀の、新しい技術の競争が始まろうとしています。産業的な観点からも、AIの登場により、半導体産業は大きく変わっていくことが予測されます」

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