オニール自治政府首席大臣(左)も「統合」の主張は控えめだ[スナク首相、クリス・ヒートン・ハリス北アイルランド担当相との会談に臨んだオニール氏とリトルペンゲリー副首席大臣(右)=2024年2月5日、北アイルランド・ベルファスト](C)REUTERS/Carrie Davenport

 英国残留をうたう多数派プロテスタント系による統治が100年以上前から続いてきた北アイルランドで、アイルランドとの統合を掲げる少数派カトリック系の首席大臣(首相)が初めて誕生した。地元議会で第一党となった「シン・フェイン党」の副党首ミシェル・オニールで、画期的な出来事だと受け止められている。ただ、これを機に南北アイルランド統合に拍車がかかるかというと、そう単純にはいかないようだ。北アイルランドはむしろ、いわゆる「非承認国家」に似た存在に近づいて、英国とアイルランド双方の利点を享受するようになるのではないか。すでにその兆候は現れ始めている。

父親はIRA活動家

 2月3日、首席大臣として活動を始めたオニールは、2人の子どもを持つ47歳の女性である。シン・フェイン党副党首だが、党首はアイルランドにいるため、北アイルランド側では名目上もトップにあたる。10代から政治活動に携わり、北アイルランド中部ダンガノンの市長などを経て2018年に副党首に就任し、2020年から2年あまりは副首席大臣を務めた。

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