11月8日の投票日まで50日を切った米大統領選挙。その選挙当日、米政府が最も恐れているのは、各州の投票・集計システムに対して、ロシア情報機関がサイバー攻撃をかける、という悪夢のような事態である。
 実は、既に米国の一部の州選挙管理委員会が今年6月以来、サイバー攻撃の被害を受けていることが分かった。連邦捜査局(FBI)の国家安全保障部門はこのほど、各州に対して発した「フラッシュアラート(警戒速報)」で、これらの被害を報告。被害状況や攻撃の技術的特徴などを伝達したという。
 選挙当日、投票結果は各投票所から郡の選管、さらに州選管に報告という形で、集計システムを通じてまとめられる。そのシステムがサイバー攻撃を受けた場合、正しい選挙結果が報告されず、米民主主義の根幹が揺らぐ。米国には、正常に大統領選挙を実行するための手だてがあるだろうか。

攻撃受けた2州の選管

 米報道によると、選管のデータベースがサイバー攻撃を受けたのは、アリゾナ州とイリノイ州。両州とも、ハッカーが選管のコンピューターに侵入して、有権者登録に関する情報を盗もうとした形跡が見られるという。
 アリゾナ州選管が攻撃されたのは5月末。被害状況を調査したFBIの指摘を受けて、インターネットとの接続を断絶して、調査した結果、郡レベルで選管スタッフ1人のユーザーネームとパスワードが盗まれる被害があったと伝えられている。
 イリノイ州では7月に有権者登録データを記録したコンピューターへの侵入が発見された。ただ、データ書き換えの事実は確認されていない。
 両州のほか、少なくとも2州が攻撃を受けた可能性があり、現在全米各州の選管当局が点検作業を行っている。
 本欄の7月20日付記事でも、ロシア国内情報機関「連邦保安局(FSB)」とロシア軍情報機関「参謀本部情報総局(GRU)」のそれぞれのサイバー組織が民主党全国委員会などをサイバー攻撃し、メール2万通など大量の情報を盗んだことを伝えた。
 アリゾナ州のマシュー・ロバーツ広報部長は「既知のロシア人ハッカーのユーザーネームが残されていた、と間接的に聞いた」とCNNテレビに話している。ただ、FBIはアリゾナ、イリノイの両州の事件については公式には「ノーコメント」としている。

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