「難民問題」で溺死寸前だったメルケル首相の政局「遊泳術」(上)
2018年7月13日
危うく瓦解するところだった。メルケル政権は崖縁に追い詰められ、あと1歩踏み出せば崖下真っ逆さま、というギリギリのところでなんとか収拾を見た。
もしメルケル政権が瓦解していれば、影響はドイツのみに止まらない。何と言ってもドイツは欧州連合(EU)安定のアンカーである。実際、この3月までドイツが連立交渉でもめた際、半年近くにわたり欧州は何も決められなかった。欧州が多くの問題、つまり米国との関税、イラン核合意、ロシア制裁、BREXIT(英国のEU離脱)など、いくつもの難題を抱え込む中、ドイツの安定は欧州にとりなくてはならないものであり、それは世界の安定にもつながるのだ。一体ドイツで何が起こったのか。
急転直下の妥協案
キリスト教民主同盟(CDU)のアンゲラ・メルケル首相と、その姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)の党首であり内相のホルスト・ゼーホーファー氏による抗争の発端については、前回及び前々回の拙稿(2018年7月5日「緊急首脳会議『合意』はしても『解決』はしないEU難民問題」、6月29日「『難民問題』で『連立解消』!? またもや窮地『メルケル』」)を参照いただくとして、ここでは6月28、29日のEU首脳会議以降の動きから話を始めよう。
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