老舗「亜華肉骨茶」の肉骨茶(筆者撮影、以下同)

 

 料理には、食べる人の社会階層も深く関わっている。現代においては誰でも食べられる郷土料理でも、かつては特定の集団が特定の場所で、特定の理由をもって生み出したものが珍しくない。

 その1つが、シンガポールやマレーシアのあるマレー半島で食べられている「肉骨茶」という料理だ。私にとっては、マレー半島を訪れるたびに味わわないではいられない「必食」の1品である。

 料理にはしばしば歴史が宿るものだが、この肉骨茶はマレー半島のチャイニーズ・ヒストリーを強烈に映し出す。

煮込んだ骨付き豚肉が塊ごと……

 名前も強烈なら、味も強烈だ。「肉骨」というだけあって、徹底的に煮込み、胡椒で味付けされた骨付きの豚肉が、肉の塊ごとスープに入って出てくる。それに醤油をとろりと甘辛く煮詰めた「醤油膏」と呼ばれる調味料と唐辛子をこれでもかというほど混ぜ込んで、白飯と一緒に食べていく。

 スープを飲んでいると舌にぴりぴりと胡椒の刺激が伝わってくる。醤油ラーメンにたっぷり胡椒を振りかけ、麺を食べきったあと、丼の底にたまった胡椒ごとスープを飲み干す時の感覚によく似ている。

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