絶妙なバランスを持つケニアコーヒー(筆者撮影、以下同)

 

 空港は「その国の鏡」だと言うけれど、確かに真実をついている。ここはやばい、という国の空港では、その場にいる誰もが、なんとなく身構えていて、やっかいごとに巻き込まれたくないので、黙ってじっと危ない連中の動きを見つめている。その手の空港には、どこか独特の緊張感が漂っているものだ。

 そんなとき、私はいつも少し歩みを緩めて、空港のカフェやベンチを探して腰を落ち着け、遠くから人々がどんな動きをしているか客観的に観察し直す。危ない連中がどこにいるのか、いないのか、見極めるのが大切だ。

「冷たい水の場所」。ケニヤの首都・ナイロビは、マサイ族のそんな言葉が由来だとされる。水がある、ということでここに集落が生まれ、都市に育ったのだろうか。ケニアの治安はとても悪いとガイドや旅行記には書いてあるので、身構えて空港に降り立った。しかし、拍子抜けすることに、なんだかのんびりしていて、危ない感じがない。直感的にこれは大丈夫だ、と安心した。

 ただ、空港からナイロビ市内まではひどい渋滞に巻き込まれた。交通は「凶悪都市」そのものだ。大型のバス、「マタトゥ」と呼ばれる小型乗合バス、自家用車やバイクが車線変更を繰り返しながら入り乱れ、10分経っても1メートルも進まない。本来は車で30分ぐらいのところにあるホテルへ2時間もかけて行く、難渋な移動を強いられた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。