「長寿麺」の生みの親・張さんと安藤氏とで交わされた即席麺の特許譲渡契約書(筆者撮影、以下同)

 

『南極料理人』(2009年公開)という映画をみた。面白かったのは、南極の基地に派遣され、世間から隔絶された生活にストレスをためた越冬隊隊員たちが、思い悩んだ末に死ぬほど食べたくなった料理がラーメンだったことだ。おにぎりでも味噌汁でもない。

 隊員の1人が叫んだ。

「私の体はラーメンでできているんだ!」

 笑える反面、切羽詰まった気持ちもよくわかる。ラーメンの原点は中華料理だが、すでに日本で独自の進化を遂げて、国民食の地位を確立している。そのことがこの映画からは伝わってきた。

 ラーメンの国民食化。それはあるいは、日清食品の創業者・安藤百福氏が戦後に売り出したチキンラーメンの偉業であったかもしれない。そう考えても、あながち大げさではないだろう。

『南極料理人』が描いた時代よりはるか昔、1950年代に始まった初期の南極越冬隊が昭和基地に持ち込んだ即席麺があった。開発したのは台湾人だ。と言っても、安藤氏ではない。麺の名前もチキンラーメンではなく、「長寿麺」という別の即席麺だった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。