【ブエノスアイレス】「聖女」エビータのポピュリズムと肉の炭焼き
2019年2月15日
その墓は、花で溢れていた。
小雨の降り続く冬のブエノスアイレス。その郊外にある「レコレータ墓地」を訪れた。歴代のアルゼンチン大統領や高名な文人、学者の墓を集めたこの場所は、指折りの観光地である。
ここには「墓ガイド」がいる。スペイン語のガイドばかりだが、ようやく英語のガイドを見つけて、エビータの墓に案内してもらった。
エビータと言えば、フアン・ペロン元アルゼンチン大統領夫人、エバ・ペロンの愛称だ。国民的人気を誇ったが、若くしてガンを患い、大統領夫人のまま33歳の若さで世を去った。その生涯はミュージカルや映画にも描かれている。
労働者の「聖女」
「この墓の1番人気はここ。彼女は『デスカミサード』のマリア様、聖エビータだ」
初老の男のガイドは、そう言って墓のエビータの彫り物を指差した。「デスカミサード」の意味がわからなかったので尋ねると、ガイドは「金のない労働者たちのことだ」と教えてくれた。「聖女」の冠まで自らのものにしているとは。
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