名付けて「肉なんでも定食」(筆者提供、以下同)

 

 その墓は、花で溢れていた。

 小雨の降り続く冬のブエノスアイレス。その郊外にある「レコレータ墓地」を訪れた。歴代のアルゼンチン大統領や高名な文人、学者の墓を集めたこの場所は、指折りの観光地である。

 ここには「墓ガイド」がいる。スペイン語のガイドばかりだが、ようやく英語のガイドを見つけて、エビータの墓に案内してもらった。

 エビータと言えば、フアン・ペロン元アルゼンチン大統領夫人、エバ・ペロンの愛称だ。国民的人気を誇ったが、若くしてガンを患い、大統領夫人のまま33歳の若さで世を去った。その生涯はミュージカルや映画にも描かれている。

労働者の「聖女」

エビータの墓は献花が絶えない

「この墓の1番人気はここ。彼女は『デスカミサード』のマリア様、聖エビータだ」

 初老の男のガイドは、そう言って墓のエビータの彫り物を指差した。「デスカミサード」の意味がわからなかったので尋ねると、ガイドは「金のない労働者たちのことだ」と教えてくれた。「聖女」の冠まで自らのものにしているとは。

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