【アモイと金門】カキオムレツと鄭成功の謎

執筆者:野嶋剛2019年5月24日
「これぞカキオムレツ」という小金門のカキオムレツ(筆者提供、以下同)

 

 死ぬ前に食べたいものを3つ挙げよと言われたら、その1つに入る食材がカキである。カキは焼いてよし、生でよし、揚げてよし、という大変、料理のしがいのある食材だが、私が1番好きなのは実は油で炒めたカキの料理だ。熱を加えて倍加したカキの旨味。カキフライほどは油っこくもない。日本であまり食べられる店がないので、中華圏に行くとカキ炒めをつい注文してしまう。

 そのカキ炒めの発展形と言ってもいい料理が、台湾の「蚵仔煎(オアジエン)」である。この料理の日本語訳は、すでに「カキオムレツ」が定着している。しかし、私の感覚では、オムレツではなく、お好み焼きに近い。この料理は、炒めたカキにサツマイモ粉(片栗粉でも代用可)を絡めて、卵でコーティングする。腹持ちもよく、大人から子供にまで好かれる料理だ。

 台湾庶民料理の代表格として知名度も高く、2007年に台湾の雑誌『遠見』が行った調査では「最も台湾を代表する料理」になんとこの蚵仔煎が選ばれている。台湾政府の経済部が行った「外国人が好きな台湾料理」でもナンバー1に輝いた。まさに台湾を代表する料理なのである。

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