名店「ドゥオーモ」の絶品カンノーロ(筆者提供、以下同)

 

 自分の名前に島の字がついているから、というわけでもないが、島が好きである。そして、島には船で行くに限る、と思っている。橋で渡ると、島旅はどこか興ざめしてしまう。飛行機も悪くないが、美味しい料理を、いきなり前菜なしに食べさせられるような気分になる。ゆっくりと島影が大きくなっていくのを眺めながら島に近づく船旅のロマンに敵うものはない。

 よく「長靴」に譬えられるイタリア半島の先端に浮かぶシチリアの面積は、四国よりも大きく、九州よりも小さい。島というよりは、ちょっとした大陸のような感じもある。

 島はだいたい真ん中に山があって周縁部にわずかな平地があり、そこに街が形作られるのだが、シチリアもその例に漏れない。島を代表する都市でシチリア州都のパレルモから時計回りにカターニア、シラクサ、アグリジェントなど、それぞれ個性的な都市が適度の距離間に散らばっている。

 シチリア行きを決めた時、あえて船便があるナポリを先に訪れ、夜行の船を選んだ。1等個室で値段は日本円で1万円ぐらい。ホテル1泊分と思うと、とてもリーズナブルだ。早朝、目を覚ますと、パレルモの港に船がのろのろと滑り込んでいるところだった。

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