「全員死なずに帰ってきました!」北極冒険家「帰国報告」

執筆者:フォーサイト編集部2019年6月14日
真っ黒になって帰ってきた「チーム荻田」

 

 この春、カナダ北東部バフィン島の約600キロの道のりを12人の若者と歩いた冒険家の荻田泰永さん。フォーサイトでは『北極冒険家「極地便り」』と題し、3月25日の出発から5月11日の帰国までをレポートしてきた。

 20年前、自身が冒険家の大場満郎さんに連れられ北極を訪れたように、若者に何かきっかけを与えたい――。そんな思いから始まった今回の北極行は、荻田さんにとっても新鮮な挑戦だったようだ。以下、帰国後のインタビューをお届けする。

 

――帰国して1カ月ですが、改めて感想は?

 とにかく無事に終えられてよかったです。95%は何事もなく、残りの5%はモノが壊れるなどいろいろありましたが、すべて想定内。想定外のことは1つもありませんでした。

 

――自然が相手だと何が起きるか分かりません。パングニタングを出発して数日が経った頃、海氷の状況次第では中間地点のキキクタルジュアクで引き返すかもしれないという局面がありました。どういう状況だったのでしょうか?

北極の氷は一筋縄ではいかない

 キキクタルジュアクからゴールのクライドリバーまでの海岸線には、「定着氷」という比較的安定した氷が岸に沿って広がっていて、まず春まで溶けません。でも、ここから沖側の氷は動くんです。グリーンランド側からの海流が下りてきて、クライドリバーの半島のところで内側に巻く。すると、氷が時計回りに動き、定着氷とくっついたり離れたり、ということが起きる。

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