ブレグジット後の英国「主権」考(下)あぶり出された問題
2020年2月14日
前稿に続き、英国の憲法学者ヴァーノン・ボグダナーの著書『ブレグジットを越えて』に主に依拠しつつ、英国の「主権」問題を考えてみたい。
英国の欧州連合(EU)からの離脱「ブレグジット」で、主権を取り戻そうとするのは「EUから」だけでなく「司法から」でもあるのは、前稿で検証した通りである。本稿では「どこへ」取り戻すのかを探ってみよう。
亀裂と分断を生む「レファレンダム」
これまで本欄でも何度か指摘しているが、国民投票や住民投票などの「レファレンダム」は民主主義にとって有益な制度であると同時に、極めて危険なツールでもある。めったなことでは使わない方がいい、というのが筆者の持論である。
2015年11月5日付『ドネツク人民共和国往還記(中)住民投票は何をもたらしたか』や、2016年6月28日付『「キャメロン」という「愚か者」:英国「EU離脱」の本質(上)』ですでに見た通り、多様な意見が棲み分けている世論を、無理やり白か黒かの2つに分ける点で、レファレンダムは社会に亀裂と分断を生みがちである。
記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。