ドネツク人民共和国往還記(中)住民投票は何をもたらしたか

 今回ドネツクを訪れたのは、「ドネツク人民共和国」の独立を決めた1年前の住民投票に関する取材のためだった。住民投票は正しい手順を踏んでいたか、不正や操作はなかったか、そもそも実施すべきだったのか。それを検証しようと、投票を準備した人民共和国の最高議会(ソビエト)議長ボリス・リトヴィノフ(61)にインタビューを申し込んだのである。

 リトヴィノフは、大学の教員も経験したインテリで、ソ連時代からの共産党の政治家である。ソ連崩壊後のウクライナで州議会議員などを務めていた。

ドネツク人民共和国の旗を背にしたリトヴィノフ議長(筆者撮影、以下同)

 約束の5月6日午後6時、「ドネツク人民共和国政府庁舎」、つまり旧市役所の9階にある執務室を訪ねた。その壁には、2枚の肖像画のコピーがピン留めされている。1枚はスターリンである。迎えてくれたリトヴィノフによると、スターリンはソ連救国の英雄なのだそうである。

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執筆者プロフィール
国末憲人 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長を経て、現在は朝日新聞ヨーロッパ総局長。著書に『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)など多数。新著に『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)がある。
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池内恵の中東通信

池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。

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