失言で窮地に陥ったパシニャン首相(C)AFP=時事

 

 昨年秋に旧ソ連のアルメニアとアゼルバイジャンの間で勃発した第2次ナゴルノ・カラバフ戦争について、筆者はロシアの地政学的な思惑軍事面でのインパクトを中心に紹介してきた。

 まとめるならば、ロシアはアルメニアとアゼルバイジャンの双方を自国の「勢力圏」に留めるために敢えてアルメニアを見捨てたのであり、こうしたロシアの思惑を的確に読んだアゼルバイジャンは「兄弟国」トルコの支援を受けて勝利を収めたということになろう。

 そして戦後、ロシアはナゴルノ・カラバフに平和維持部隊を展開させて紛争解決の主導権を握り、アゼルバイジャンは第1次戦争(1994年に停戦)で奪われた領土の多くを奪還した。トルコはアゼルバイジャンに対する影響力をさらに強め、11月に結ばれた停戦合意に従ってアゼルバイジャンとの陸上交易路を獲得している。

 こうなると、戦争はアルメニアの一人負けであったということになろう。

 実際、戦争後のアルメニアでは大敗北の責任者探しが始まり、その主な矛先は2018年の政変で政権の座についたニコル・パシニャン現首相に向けられた。パシニャン政権は国民の厳しい批判に晒され、今年2月には後述する軍との対立という難問まで抱え込んで現在に至っている。

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