中国にも深く進出している台湾企業は難しい舵取りを迫られる(鴻海精密工業創業者の郭台銘氏=2019年撮影) ©︎時事

   台湾の鴻海精密工業と台湾積体電路製造(TSMC)が7月12日、独バイオ企業ビオンテックの新型コロナウイルスワクチンを中国医薬品大手・上海復星医薬集団から購入する契約を結んだと発表した。鴻海の創業者で前会長の郭台銘(テリー・ゴウ)氏が仲介役となったようだ。計1000万人分が9月には届く見込みといい、ワクチン不足に苦しむ台湾へ供給が増えること自体は喜ばしいニュースだ。

   だが、事はそう簡単ではない。背景にはやはり、コロナによって動揺した世界で影響力を拡大したい中国の思惑が見え隠れする。キーワードはワクチンそのものというより、現代医療を支える「データ」だ。

「中国の介入」に妨害された台湾

   蔡英文政権は新型コロナ感染者が急増する以前から、ビオンテックのワクチン調達を図っていた。だが「中国の介入」(蔡総統)に妨害され、1月には最終契約書案を交わしたものの、「契約内容以外の問題」(台湾の陳時中衛生福利部長)で締結に至らなかったのだという。上海復星医薬が、ビオンテックの香港やマカオ、台湾の販売代理権を取得したことが影響力の行使につながったようだ。

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