アフガニスタン東部ジャララバードを制圧したタリバンの戦闘員(8月17日撮影) ⓒEPA=時事

 アフガニスタン情勢がパンドラの箱を開けようとしている。バイデン政権が米軍完全撤退の公約を実施に移すや否や、反政府勢力タリバンが大攻勢をかけ、政府軍は雪崩を打って崩壊していく。アフガンのアシュラフ・ガニ大統領が国外に退避し、タリバンが首都カブールの大統領府を占拠する。米大使館からは機密書類を焼く煙が上がり、ヘリコプターが舞い去る。

 デジャヴュ。そんな光景は多くの米国人の古傷を刺激し、バイデン政権のアキレス腱になるに違いない。古傷とは1975年4月の南ベトナムの崩壊であり、サイゴン陥落である。サイゴン陥落時の大混乱は、米国が目の当たりにした敗戦の風景である。タリバンが人権弾圧を重ねているのは周知の事実。タリバンにやすやすとカブールへの道を開いたことは、強硬派から人権派に至るまでの政権批判を誘発することになっている。

リベラル派メディアからもバイデン批判

 アフガニスタンは帝国の墓場といわれる。英国が3度にわたるアフガン戦争で敗退し、旧ソ連が国力を消耗させ、そして米国が足かけ20年にわたる戦争で敗れた。今回の出来事の基点は、2001年9月11日の米同時多発テロである。ニューヨークとワシントンを襲ったイスラム原理主義組織アルカーイダ。その背後で糸を引くのはタリバンであると、当時のブッシュ政権は断定し、英国とともにアフガニスタンに侵攻した

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。