ラムズフェルド元長官「知らないということさえ知らない」危機と陥穽

執筆者:杉田弘毅 2021年7月7日
タグ: アメリカ
エリア: 中東 北米
故ラムズフェルド元国防長官の「知らないということさえ知らない」という言葉は、名言なのか迷言なのか (C)AFP=時事
「知らないということさえ知らない」想定外の危機に備えるのは、政治の理想かもしれない。だがそれは、歴史の審判に耐えうるものなのか――元米国防長官の生涯から、改めて考える。

 6月29日に88歳で死去したドナルド・ラムズフェルドは、米中枢同時テロ(9・11)からイラク戦争に至る米国の戦時に国防長官を務めた、どちらかというと嫌われ者の政治家だ。ジョージ・W・ブッシュ大統領に始まり、ディック・チェイニー副大統領、ネオコンのポール・ウルフォウイッツ国防副長官ら、この時の政権幹部は大体において評判が悪い。国際社会の反対を押し切り、根拠薄弱なままイラク戦争を強行し、「イスラム国」の跳梁などその後の中東の混乱を引き起こしたことを考えれば、妥当な見方かもしれない。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
杉田弘毅(すぎたひろき) ジャーナリスト・明治大学特任教授。1957年生まれ。一橋大学を卒業後、共同通信社でテヘラン支局長、ワシントン特派員、ワシントン支局長、論説委員長などを経て現在客員論説委員。多彩な言論活動で国際報道の質を高めたとして、2021年度日本記者クラブ賞受賞。BS朝日「日曜スクープ」アンカー兼務。安倍ジャーナリスト・フェローシップ選考委員、国際新聞編集者協会理事などを歴任。著書に『検証 非核の選択』(岩波書店)、『アメリカはなぜ変われるのか』(ちくま新書)、『入門 トランプ政権』(共同通信社)、『「ポスト・グローバル時代」の地政学』(新潮選書)、『アメリカの制裁外交』(岩波新書)『国際報道を問いなおす』(ちくま新書)など。
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