2017年12月、アフガニスタン・マザリシャリフに駐留するドイツ軍部隊を訪問したフォンデアライエン独国防相(現・欧州委員会委員長)。ISAF終了後も、ドイツはNATOの一員としてアフガニスタンに関与し続けた (C)EPA=時事

 2021年8月15日のカブール陥落とその後の混乱状況については、世界中でさまざまな議論がなされているが、端的にいって欧州は、憤っている。そして、それでも状況を根本的には変えられないことへの無力感が増大している。

 憤っているのも、無力感にさいなまれるのも、その基礎にあるのは、欧州が過去20年にわたり、極めて深くアフガニスタンに関与してきたという事実である。欧州各国軍のアフガニスタン作戦での犠牲者数は、最多の英国の455名を筆頭に、欧州全体で1000名近くにのぼる。米軍の犠牲者数が2500名弱であることと比較しても、決して少なくない。

 20年間、米国とともに戦ってきたのがNATO(北大西洋条約機構)加盟国を中心とする欧州諸国であり、ジョー・バイデン政権による一方的な撤退は、欧州諸国にとって大きな衝撃だったのである。

 欧州にとってのアフガニスタンは、「米国の戦争」でも「米国の敗北」でもない。「欧州の戦争」であり、突然にやってきた「欧州の敗北」だった。この感覚が、日本における一般的な受け止められ方と最も異なる部分だろう。以下では、NATOによるアフガニスタン関与を振り返ったうえで、欧州の置かれた状況をみていこう。

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