米軍のドローン攻撃で破壊された車(C) AFP=時事

 

 2021年8月30日夜、最後の米軍輸送機がカブール国際空港を発ち、米国にとって「史上最長の戦争」が一応の終結を迎えた。翌31日、米国のジョー・バイデン大統領は米国民向けに演説し、米軍撤退は永遠の戦争を終わらせるための「最善の決断」だったと主張した。

 しかし、サイゴン陥落(1975年)を彷彿とさせる米国大使館からのヘリコプターを使った退避劇は、米国の「敗北」を印象付けるものであった。少なくとも外国軍放逐を目標に掲げたタリバンにとり、今回の事態は「カブール解放」と呼べる出来事であった。30日夜、カブールでは夜通し祝砲が鳴り響いた。

「史上最長の戦争」はこれで終結したようにも見える。しかし、事態はそう単純ではない。ほぼ全土を制圧したタリバンによる将来の統治がどのようなものになるのか、現時点で明らかでないからだ。

 さらに、8月26日と30日には「イスラーム国ホラーサーン州(ISKP)」による攻撃事案が発生するなど、テロの脅威が前景化している。

 米軍撤退後の治安・テロ動向を読み解く必要性が高まっていることから、本稿ではタリバンとISKPを含むアフガニスタンの諸勢力の全体的な見取り図、タリバンとISKPの関係、米国とタリバンの対ISを巡る関係など、今アフガニスタンで何が起きているのかに焦点を当て、「対テロ戦争」の今後を展望したい。

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