国内政治に翻弄された外交:米中対立の東アジアに「独自性」を構想できるか
2021年9月13日

ブッシュ米大統領(当時)との関係は、小泉氏の国内政治基盤を強化することにもつながった ⓒAFP=時事
個人的体験から始めたい。
2003年4月9日。朝日新聞の政治担当編集委員だった私は、東京・築地の朝日新聞本社6階の編集委員室でテレビ画面を見つめていた。米軍がイラクに侵攻したというニュースを聞いたからだ。テレビは現地の映像を伝えていた。米軍の兵士が次々と首都・バグダッドに入り、サダム・フセインの巨大な銅像が倒されるシーンが繰り返し流された。イラク側の抵抗の様子はなく、街にはイラク兵の姿も見えない。
2001年9月11日の同時多発テロを受けて、米国のG・W・ブッシュ政権が着手したアフガニスタン侵攻でタリバーン政権は崩壊。続いてブッシュ政権は、明確な根拠がないままイラクへの侵攻を進めた。米軍の苦戦も指摘されたが、結果はあっけないバグダッド陥落。同時テロで大きく揺らいだ米国の威信は回復したかに見えた。
だが、同じ部屋でテレビを見ていた中東担当の編集委員K氏の見方は違っていた。「イラク兵は、最新鋭の米軍が攻めてきたので、武器を持って自宅に帰っただけだ。進駐米軍にイラク兵はしぶとく抵抗するだろう。米軍はこれからイラクの泥沼に苦しむだろう」と言うのだ。
記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。