国際論壇レビュー

「解放の日」の後に積み残された課題

 四月九日、サダム・フセインの像が歓声とともに引き倒され、バグダッドが陥落した。三週間という驚異的なスピードで、米英を中心とする連合軍は、サダム・フセイン政権を事実上、崩壊させた。国連安全保障理事会の新たな決議なしでの開戦ということもあって、世界各地で反米・反戦デモが行なわれる中での戦争であった。戦争に至る過程でおきた主要国間の対立は、冷戦後これまでにないものだった。戦後のイラクの復興に本格的に取り組まなければならない現在、国際社会は、再び協調の体制を作り出していくことができるだろうか。解放の喜びと高まる懸念

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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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