mRNAワクチンには20年以上の基礎研究の蓄積がある(写真はイメージです)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をめぐる状況は刻一刻と変化しており、予断を許さない。中でもデルタ株の猛威は凄まじく、各国に大きな被害と混乱をもたらしている。

 こうした状況の中で、ワクチンの存在は大きな救いとなっている。米国では、2021年5月にCOVID-19で入院した人の98.8%以上、亡くなった人の99.2%が、ワクチン接種の未完了者であることが報告された。東京でも、ワクチン接種が進んでいる65歳以上の感染者は、全体の約4%に抑えられている(2021年7月5日~15日のデータ)。重症化しやすい高齢者層の感染が抑制され、その結果死者数も大幅に減少しているのは、現状における唯一の光明といってもいいだろう。流行開始からわずか一年少々で、ここまで効果の高いワクチンが登場すると予測していた者は、専門家にもほとんどいなかったのではないだろうか。

 この優れた成果をもたらしているのは、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンと呼ばれるテクノロジーだ。このタイプを採用したファイザー/ビオンテック社およびモデルナ社のワクチンの有効率は95%前後(従来株の場合。デルタ株に対してはやや低下する)と、他のタイプの新型コロナワクチンを圧倒している。他の感染症に対するワクチンにも、これほど効果の高いものはそう多くない。

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