mRNAワクチンは「人類の悲願」を実現するか――エイズ予防やがん治療への応用に期待

執筆者:佐藤健太郎 2021年9月19日
エリア: アジア
mRNAワクチンには20年以上の基礎研究の蓄積がある(写真はイメージです)
新型コロナウイルス感染症で一躍脚光を浴びたmRNAワクチン。20年以上にわたって研究されてきた成果が今ここに花開いた。新型コロナだけでなく、人類の悲願であるエイズやマラリア、がんの克服にも効果が期待されている。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をめぐる状況は刻一刻と変化しており、予断を許さない。中でもデルタ株の猛威は凄まじく、各国に大きな被害と混乱をもたらしている。

 こうした状況の中で、ワクチンの存在は大きな救いとなっている。米国では、2021年5月にCOVID-19で入院した人の98.8%以上、亡くなった人の99.2%が、ワクチン接種の未完了者であることが報告された。東京でも、ワクチン接種が進んでいる65歳以上の感染者は、全体の約4%に抑えられている(2021年7月5日~15日のデータ)。重症化しやすい高齢者層の感染が抑制され、その結果死者数も大幅に減少しているのは、現状における唯一の光明といってもいいだろう。流行開始からわずか一年少々で、ここまで効果の高いワクチンが登場すると予測していた者は、専門家にもほとんどいなかったのではないだろうか。

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カテゴリ: 医療・サイエンス
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執筆者プロフィール
佐藤健太郎(さとうけんたろう) 1970(昭和45)年、兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。医薬品メーカーの研究職等を経て、現在はサイエンスライター。2010年、『医薬品クライシス』で科学ジャーナリスト賞受賞。著書に『炭素文明論』『世界史を変えた新素材』など。
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