誰も合理的に説明できないSBI・新生銀行のTOB、もはや囁かれるのは「理外の理」

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執筆者:浪川攻2021年10月11日
地域経済活性化を担うという新会社「地方創生パートナーズ」設立について記者会見するSBIホールディングス・北尾吉孝社長と新生銀行・工藤英之社長(スクリーン上の右)=20年6月 ⓒ時事

 SBIホールディングスによる新生銀へのTOB(株式公開買い付け)がメディアの話題になっている。SBIグループはすでに同銀行株式の20.32%を保有する大株主であり、最大で5821万株まで買い付けるという。工藤英之社長など新生銀の経営陣はこれに反発し、買収防衛策を巡って、両者の攻防が続いている。

 ところが、である。一般には関心を持たれているとは言い難い。その理由のひとつは新生銀の特異性にあるだろう。大手銀行の一角というポジションではあるものの店舗は少なく、生活口座となるケースも少ないからだ。

 新生銀は2000年に誕生した。母体は金融危機のさなかに経営破綻した旧日本長期信用銀行だ。政府の銀行再生政策の一環として、米国企業再生ファンドのリップルウッドを中核とする「ニューLTCBパートナーズ」に売却された。つまり、同銀行は今年で誕生から22年目を迎えている。

 新生銀は、経営悪化した銀行に国が注入した公的資金を返済できていない唯一の銀行だ。より正確を期すると、地域経済活性化のための地域金融機関向け公的資金注入スキームである金融機能強化法に基づき公的資金を申請した地域銀行などはある。しかし、新生銀の場合は、経営悪化に陥った銀行に公的資金が注入されるパターンだった。1990年代末から00年代にかけて、同銀行のほかに、あおぞら銀行、足利銀行なども同様に公的資金を注入されたが、すでに各銀行ともに完済し終えている。唯一、返済しきれずにいるのが新生銀にほかならない。

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