自身は「中立」であると主張するボルソナーロ大統領(C)AFP=時事

 

 ロシア軍によるウクライナ侵攻の1週間前、ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領はウラジーミル・プーチン大統領と会談を行っていた。侵攻作戦が始まってからもボルソナーロ大統領は、「中立」を主張しつつも、しばしばプーチン寄りとも取られ兼ねない発言を繰り返している。その一方でブラジルは国連における2つの対ロシア非難決議で賛成票を投じた。ブラジル政府内では対応をめぐって意見の相違が出ているようにも見えるが、南米の地域大国ブラジルは東欧の危機をどのように受け止め、今後どのように行動するのだろうか。

決行されたロシア訪問

 ウクライナ侵攻の後、ボルソナーロ大統領による2月中旬のロシア訪問が改めて問題視された。情勢をめぐる緊張感が高まる中での訪露はプーチン政権への支持と受け取られ兼ねないため控えるべきだとの指摘は、ブラジル国内のみならずアントニー・ブリンケン米国務長官からもなされていたが、ボルソナーロ大統領をヘッドとする代表団はモスクワ訪問を決行した。

 ブラジル大統領府の報道発表によれば、ボルソナーロ大統領は首脳会談後の会見で国防、石油ガス、農業の各部門での協力へ向けたロシアとの連帯を強調し、農業については肥料や動物由来製品に関心を寄せていると明言したが、訪問の成果として協定などへの署名はなかった。農業部門は大統領支持層の一角を成していることから、ロシア訪問には今年10月の大統領選での再選を見据えた政治的な意図があったとの指摘もある(3月5日付コヘイオ・ブラジリエンセ紙電子版)。

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